2018年本屋大賞、これで読むの3冊目です。
7位「星の子」、8位「崩れる脳を抱きしめて」はボツにした。「騙し絵の牙」は6位の作品。これまで読んだ3作品では一番面白かったです。
「星の子」は芥川賞っぽい作品。直木賞みたいなエンタメ作品じゃない。
「崩れる脳~」は美しい恋愛ものなんですが、後半はミステリーになっちゃう。ミステリーのひねりも映画「スティング」みたいに1回程度ならいいのですが、何度もひねられると、複雑すぎてついていけない。感情移入できなくなってしまう。
2018年本屋大賞1~5位作品は順に、SF、殺人、殺人、芸術史(ゴッホ)、殺し屋です。う~ん、、読みたいのがない。ぼくが理解できないのは、なんでこんなに推理小説のニーズが高いのかという。
ぼくも昔は好きでした。推理小説しか読んでなかった時期もある。小学校のときはシャーロックホームズを全作品読みました。ライヘンバッハまで一気読み。ポアロとか明智とか金田一も読んだ。だけど推理小説は小学校で飽きちゃった。
小説の醍醐味って「追体験」だったり「共感」だとおもう。自分の中の楽しかった思い出を呼びおこして、あったかい気持ちになる。自分が達成できなかった夢をみたい。幸せな気分に浸りたい。
厳しいのは現実だけでいいです。
そういう意味では、今年の本屋大賞は「星野百貨店」と「ツバキ文具店」の続編が楽しみです。それぞれ9、10位にランクインしてます。
タイトルって大事ですよね。読み進めていくとなんでそのタイトルなのかわかって、ハッとしたりして。さいしょタイトルの騙し絵っていう部分を見て、「ギャラリーフェイク」みたいな芸術エンタメ作品かと思いました。
『大手出版社で雑誌編集長を務める速水。誰もが彼の言動に惹かれてしまう魅力的な男だ。ある夜、上司から廃刊を匂わされたことをきっかけに、彼の異常なほどの“執念”が浮かび上がってきて…。斜陽の一途を辿る出版界で牙を剥いた男が、業界全体にメスを入れる』
職業エンタメ小説でした。
なんで表紙が大泉洋なのかという・・ぐぐりました。
『「騙し絵の牙」は発案当初から映像化も視野に入れ企画され、原作者の塩田が大泉の出演する映像作品や資料、本人との直接の会話・取材から大泉を徹底分析。口調やモノマネなどを忠実に作品に落とし込んだ異色の文芸作品。2016年5月から2016年11月まで雑誌「ダ・ヴィンチ」で7回にわたって連載され、2017年8月31日に単行本が刊行された』
『大泉いわく、「そもそものきっかけは、「映像化された際に僕が主演できるような小説ない?」と長年尋ねられ続けた編集者が、『もうわたしがつくります!』と、塩田さんへ執筆依頼に伺ったことから始まった企画」だという。塩田は、企画立案から5年を経ての映画化始動に「大泉洋=速水輝也(主人公)ハマり役という言葉が生ぬるく聞こえる、映画史上類を見ないシンクロ率100%の主演俳優! 』
こういうの「当て書き」って言うそうです。演劇や映画でその役を演じる俳優をあらかじめ決めてから脚本を書くこと。だから会話部分が面白かったのか。ぽんぽんとリズムよく笑える。
主人公は45歳の編集長です。大泉洋は73年生まれの45歳。ぴったり同じ。5年前に企画した時からこの年齢まで計算してたらすごいです。今年4月に映画化が発表されたので、公開は1年後ぐらいかな。
本書で興味を引くのは、出版社の困窮状態です。新聞、雑誌、テレビ、音楽、みんなスマホに食われた。伸びてる会社(市場)は素晴らしい。新しいポジションはどんどんできるし、人も増えていく。でも縮小してる会社はしんどい。社内のポジションはなくなっていき、社内政治で自分や組織を守ることに汲々とする。人を蹴落としてそのポジションを確保しても、結局ジリ貧でしんどい。
そういえば13年8月ごろ、東洋経済オンラインの佐々木紀彦が「5年後メディアは稼げるか」という本を出していました。中の人じゃないのでよくわかりませんが、日本のメディアはけっこう持ちこたえてますよね。体力がある。あいかわらずメディアの年収は多いです。
そのとき残してる読書メモを以下に。
<血みどろの米メディア>
米国新聞社のフルタイム職員数は2000年の5.6万人から2012年には4万にまで減った。約3割が職を失った。週刊誌も「ニューズウィーク」が「紙」から2012年末に卒業した。ウェブに特化するのはコスト削減するための苦渋の決断。
<日米の新聞の広告への依存度>
米国の新聞は広告への依存度が高く、収入に占める割合は8~9割。(日本の新聞社は2~3割。宅配システムにより守られる購読料が大きい)その広告収入が、過去5年に半分以下に落ち込んでしまった。
<米メディアの広告単価>
米メディア業界は、広告に関して「1:10:100」の法則がある。これは紙で100万円だった広告は、オンラインでは10万円、モバイルでは1万円となってしまうこと。
<オンライン広告はテクノロジー企業が牛耳る>
2012年時点で5社のテクノロジー企業がウェブ広告の64%のシェアを握る。(グーグル、フェイスブック、ヤフー、マイクロソフト、AOL)伝統メディアに残されたパイは全体の34%しかない。モバイル広告分野ではグーグル、フェイスブックの2社の合計シェアが2013年で約7割。
あとNYタイムス東京支局長が書いてた、日本と海外のジャーナリストの給与の違いについて。
<日本の全国紙の記者の給料>
日本の全国紙の記者の給料は、能力によって決まるわけではない。事実上年功序列によって右肩上がりに推移していく。朝日新聞や読売新聞、日経新聞の記者の給料は特に高く、30歳を迎えるころにはすでに1000万円近くになると聞く。編集部門の平均給与は1200~1300万円前後にのぼり、論説委員や編集委員など幹部ともなればこれを大きく上回るそうだ。日本の一流企業と比べても、ずいぶん恵まれた額である。
<アメリカの記者の給料>
アメリカのジャーナリストの年収は高くない。ニューヨークタイムズの記者の平均給与は9万2000ドル(約830万円)だ。これは新聞業界のなかでトップレベルであり、地方紙の給料はもっと安い。ケンタッキーのレキシントンヘラルドリーダーの場合は、年収およそ3万7000ドル(約330万円)で、米国の記者の平均年収は約3万4000ドル(約310万円)程度だ。求人情報誌によると、未経験の新聞記者の平均年収は約2万7000ドル(約250万円)で、ホワイトカラーの平均より61%低いそうだ。
その他、本書からの読書メモを。
出版社の強みは何か
アマゾンは出版社を通さず、作家個人に直接コンタクトをとることもある。今はまだ大丈夫だ。コンテンツをつくる能力やノウハウは出版社が持っている。だが優秀な編集者やPRのプロをかき集めれば、理論上は他業種の会社がすべて自前で本づくりから販売までを賄うことができる。
雑誌編集者の仕事は多忙(どんどん廃刊はしてるけど)
雑誌編集者は多忙だ。特集や記事の企画立案から始まり、取材に際してはライターやカメラマン、メイクやスタイリストに仕事を依頼して撮影用のスタジオを押さえる。もちろんインタビュの現場に立ち会い、取材後はデザイナーに誌面の設計図となる「ラフ」の作成を発注。試し刷りした「ゲラ」と呼ばれる誌面で「初校」「再校」と二重に原稿をチェックして、無事雑誌が発行された後は経費請求書などの事務処理が待っている。それに加え付き合いの酒席も入るので年中目が回る忙しさ。
出版社の営業部の企画担当の仕事
主な仕事は発売する本の部数を編集の担当者とすり合わせ、書店からの注文の数字を取りまとめて配本リストを作成。そのリストを出版社と書店の間を取り持つ「取次」に渡す。という流れ。このうち編集と営業が本の部数を決める会議を「部決」という。できるだけ多く刷りたい編集に対し、営業は数を抑え込んで赤字のリスクを避けるのが務め。作家を弁護する編集と、過去の部数や宣伝費といった証拠を積み上げる営業が議論する。
「朝日新聞や読売新聞、日経新聞の記者の給料は…..」
朝日新聞(英語版)を読んでいる(サンフランシスコの)ある白人が、中国共産党は素晴らしいと勘違いしてしまっている….