いとうせいこう、ご存知でしょうか?
伊藤政則じゃありません。ぼくもよく知らなかったのですが、このまえスペシャのミュージックアワードで司会してました。
早稲田法学部出て講談社。ホットドックプレス編集を経て、小説家、ラッパー、俳優、お笑いタレント。現在57歳。みうらじゅんと親友だそうです。いっしょに仏像の本だしてる。
マルチな人。
いとうせいこうと精神科医の対談本です。精神科医は初の著作本。
精神科医はいとうせいこうと、バンド仲間だそうです。ちょっとした会話の中から、精神科医はすごいなと思い、「今度カウンセリング行っていい?」
いとうせいこうは彼自身の問題を抱えてた。精神科医としては、親しい人は患者にしないそうです。ふつうは他の医者を紹介する。だけど、いとうせいこうとは単なるバンド仲間で、ちょっとした知り合いだったので引き受けた。
人生で初めてカウンセリングを受けて、これは素晴らしい。多くの人に知ってもらうべきではないか。そう考えるようになった。
精神科とか心療内科に通ってる人って、「言ったら恥ずかしい」「変な病気と思われる」そういうふうに思いがち。
多くの人は病院に行くのを躊躇する。人に弱音を吐けない。自分の中に抱え込んじゃう。
「あいつ、カウンセリング行ってるらしいよ」「マジ?」日本では「恥」として認識されている。なぜ弱音を吐くんだ、なぜ我慢できないんだ。
たとえばキリスト教圏なら、告白という文化が根付いてる。司祭に自分の罪を話す。
怪我したら病院に行くように、落ち込んだらカウンセリングに行けばいい。心の傷の専門家は、精神科医やカウンセラー。不安なことがあったら、精神科の人に相談してみるのがいい。
悩みを聴いてもらうのは友人でもできるけど、友人は客観性を保とうと努力するわけでもないし、かならず「共感」してくれるとも限らない。カウンセリングの技術を友人は持ってないし、守秘義務もない。
「いとうせいこうも精神科通ってるんだ」「しんどいとき精神科通うのは、当たり前のことなんだ」って多くの人に思ってほしい。そういう本です。
以下に読書メモを。
目次
精神科の診察とは?
だいたいは「傾聴」っていって、「あぁそうですか。それは大変でしたね」みたいな感じで、
話を聞いて終わることがほとんど。もちろんただ聞くだけじゃなくて、こちらから共感を示すこともある。
患者は話ができて満足したら帰っていくし、してなければ、「いや、先生、もうちょっと話がしたいんですけど」と訴えてくるかんじ。
医者からアドバイスをもらうより、まずは話を聞いてもらいたいという人が多い。病院以外でこういうことができる場所って、めっちゃ減っている。
傾聴って「愛」かもしれない。まずはその人の話をとにかく聞く。愛されるというのは、相手に自分の話を聞いてもらうことかもしれない。
河合隼雄氏の口癖
心理学者の河合隼雄の「こころの処方箋」は言い切らない本。だいたい話の締めが、「〇〇と言えそうな気もした」とか「各自でお考え頂きたい」とか。あとがきにも「人の心などわかるはすがない」ということを呪文のように唱えてる。
文庫版には谷川俊太郎の文章が添えられていて、いわく河合さんの口癖は「わかりませんなぁ」と「難しいですなあ」と「感激しました」だったと。
プロの心理療法
心理療法を行う専門家は、傾聴と共感を示す型をロールプレイしながらトレーニングする。うなずいたり、「あぁそうですか、それは辛いですね」などと言い合ったりして。何度も繰り返して自分のものにする。
これは心理療法の専門家になるにはとても重要な事。日本にはないが、アメリカには心理療法の専門家としての資格があって、その資格試験を受けるためには、こういった基礎的な技法から、医療現場で応用できるまでのトレーニングを3000時間も行う。
精神科医と精神分析医の違い
精神科医の中で精神分析を専門にする先生方のことを、精神分析家と呼ぶことが多い。フロイトを祖とする精神分析を行う精神分析家は、今かなり少なくなっている。歴史の長さと会得への道の険しさから、音楽ジャンルでいえばクラシックのような印象。
精神科医と心理士との違い
心理士とは一般に臨床心理士を指す。もうすぐ公認心理士という国家資格もできる。彼らはカウンセラーとも呼ばれる。
彼らが持つ資格は医師免許とは違う。投薬できないのが精神科医との大きな違い。逆に臨床心理士の行う様々な心理検査や心理療法は、資格的には可能でも医師は基本的には行わない。
それぞれ身につけるには相当な訓練が必要で、そもそも診察時間が足りない。1時間はかかるので。精神科医の外来診療の診察時間は平均10分弱。
基本的には精神科医が治療方針を決めて、心理士に渡す。「この患者さんには、こういう感じの心理療法がいいですかね」などと心理士と話し合いながら、治療を進めていく。
心理検査や心理療法の指示という形で主治医が依頼することが多い。でも精神科医のいないクリニック(個人病院)もある。
先生が合わない場合は、違う医者にかかるべき
個人経営のクリニックは当たりはずれがある。これまでの経験では「え、こんな治療でええんかい」と突っ込みたくなる先生がいた。
もちろん素晴らしいクリニックも多い。しかし診察時間を短くして回転を速くし、薬を多く出す、金儲け主義もいた。
一方で総合病院の勤務医は診察時間も含めて、病院のルールの中で仕事をする。出来高払いでなく給料制。だから突出して素晴らしい治療をしてるところは少ないかもしれないが、ありえない!みたいなことは少なくて、平均点は高い。
なので大きめの病院に行って、この先生は合う、って人を見つけたほうが失敗が少ない。
精神科の症例~外因性、内因性、心因性
脳腫瘍など脳の病気、他の身体的な疾患、薬物の影響。これらが原因の場合は、心からしたら外からの要素なので「外因性」という。
原因はわからないけど、憂うつになったり、幻聴が聴こえたりする場合は「内因性」。
そして明らかに落ち込む環境があったり、性格が大きな要因と考えられる場合は「心因性」。
「心因性」の場合は、原因にアプローチするために心理療法が主体になることが少なくない。
薬物療法を併用するにせよ、心理療法が必須となる。
逆に「内因性」の場合は、薬物療法主体に治療したほうがうまくいく場合が多い。
妄想や幻聴への対応方法
まず外因性の原因を除外すべきなので検査をする。たとえば脳腫瘍とか甲状腺ホルモンなどのホルモン異常などがないか、画像検査や採血検査をする。外因性が除外されたら内因性だろうと。内因性の場合は、働きすぎてるドーパミンを薬で抑えましょうということになる。
妄想はドーパミンによって活発化するものなのか?すごく簡単にはそういうこと。
ドーパミンは考えを活発化するもの。
ドーパミンがあまりにも足りないと、何も考えられなくなるが、逆にドーパミンが多すぎると、考えが活発になりすぎて、あることないこと思いついてしまう。それが妄想であり、幻聴である。
ちなみに覚せい剤は、ドーパミンを科学的に出させる薬。つまり薬の力で統合失調症のような脳の働きにすることなので、ドーパミンが働きすぎないよう薬で抑えてあげれば、妄想や幻聴は軽減することが多い。
懐かしのロキシーミュージックで、ラブ・イズ・ザ・ドラッグ♪
だいぶ、コメントのコツがわかってきました。。。(;^_^A
日本では、なかなかこの分野については、後ろ向きな雰囲気がありますから、正しく理解されていませんね。
やはり情報発信は大切ですね。