
前回の記事で気になっていた「ギンパック」を、近所のヨーカドーで買ってきました。
ということで今夜は、ちょっとした日本酒の飲み比べです。
写真左は、おなじみの獺祭 純米大吟醸45。そして右が、今回購入してきた菊正宗のギンパックです。かなり対照的な2本です。
価格差は約5倍。高級酒として知られる獺祭純米大吟醸と、スーパーなどで気軽に買える菊正宗の普通酒です。
ここで、獺祭についてちょっと面白いデータがあります。
2021年3月号の日経トレンディ「おうち酒ブレイク予測! 日本酒、ワイン、ビール」では、日経新聞読者1,000人(ID保有者)を対象に、「勝負の日本酒ランキング」を調査しています。
質問は、「重要な取引先との接待。ここ一番のシーンで注文したくなる日本酒は?」と、「今まで飲んだことがあるもので、最もおいしいと思った日本酒は?」の2つ。
そして、なんとこの2つの質問でともに1位になったのが「獺祭」でした。いわゆるビジネスパーソンの選ぶ日本酒の頂点。
そんな「ここ一番のシーンで選ばれる獺祭」と、普段の晩酌にも気軽に楽しめるギンパック。今回は、それぞれ180mlずつ用意して、夕食と一緒に交互に飲み比べてみます。
日本酒は、値段が高ければ必ず自分の好みに合う、というわけではありません。香り、甘み、口当たり、キレ、飲みやすさ、そして食事との相性。実際に同じ食卓で飲み比べてみると、意外な違いが見えてくるかもしれません。
「勝負の日本酒」獺祭45と「普段飲み」のギンパック。価格差約5倍の2本は、果たしてどれくらい違いを感じるのか。
そして何より、自分の好みに合うのはどちらなのか?
もう少しで夕食です。
わくわくしながら、飲み比べてみたいと思います。
獺祭45と菊正宗ギンパックの比較感想

はりきって寿司を買ってきました。笑
では、いよいよ飲み比べです。
交互に飲んでみて、まず思ったのが、「ほとんど同レベルの味じゃないか?」ということ。
そしてもうひとつ、「ギンパックって、かなり獺祭に寄せてきているんじゃないか?」ということです。
これ、ブラインドで飲ませたら、どちらが高い酒なのか判別できないんじゃないかな。
正直に言うと、美味しいのはギンパックかもしれない。
これには僕自身もちょっと驚きました。
ギンパックには、甘納豆という駄菓子がありますよね。あれを思わせるような、甘みというかコクのようなものが、飲んだあと2秒くらいしてからフィニッシュにやってくる。
この感じが、僕にはかなり印象的でした。
しかも、これ、そうとう味を獺祭に寄せてきているように感じます。
香りや口当たりだけではなく、最後のフィニッシュでは、むしろ獺祭を上回ろうとしているようにも感じる。
ここからは、ちょっと話が長くなります。笑
灘の酒でいうと「剣菱」の観点
灘の酒で僕が好きなのが剣菱です。
徳川吉宗の御前酒。「下り酒」の筆頭銘柄。
「くだらない」の語源(上方から江戸に下らない酒はまずい)。
剣菱って、ずっと普通酒を貫いていますよね。
なぜかというと、米や水は、その年によって品質が違います。そこで毎年できるだけ同じ味に調えるためには、アルコール添加が必要になる。
そして、アルコール添加の割合が一定以上になると「純米酒」とは名乗れない。
だから剣菱は、あえて「普通酒」というカテゴリーをキープしている。
昔の「アル添=悪い酒」というイメージとは、ちょっと違うんですよね。
現代の酒造りにおけるアルコール添加は、味を調整するために必要な技術でもある。
このあたりに気づいてから、僕は「純米酒だから良い」という純米信仰をやめました。
今の僕が気になるのは、純米かどうかよりも、生酛なのか、山廃なのか、それとも人工的な速醸なのか。
こっちのほうが、実際に飲んでみると明らかに味が違うからです。
ちなみに、酒造りで添加されるアルコールは、ほぼ甲類焼酎のようなものです。
ウイスキーの観点でいうと
ウイスキー、とくにスコッチ系では、スタンダードクラスと12年物では、味も値段も明確に違います。
ストレートで飲めば、基本的には12年物以上のほうが確実にうまい。
もちろん加水したり、氷を入れたりすると味の差が分かりにくくなって、スタンダードのほうが好みに合うこともあります。
でもストレートで飲むと、スタンダードクラスは喉が焼けるような感じがする。
12年物以上になると、まろやかでスッと飲める。
これは僕が実際に、コスパ重視でスコッチのスタンダードクラスを20種類以上、ボトルで買って飲み比べてきた経験から、かなり自信を持って言えることです。
ただし、例外もあります。
ジェムソンはスタンダードでも、あまり「喉が焼ける」ような感じがしない。
スコッチでいうと、次点はかなり差がついて、僕の中ではJ&Bレアやティーチャーズあたり。
それ以外では、スタンダードが12年物を完全に逆転するような「下剋上」は、ほとんどありませんでした。
スコッチ以外のウイスキーやブランデーでも、似たような傾向があります。
ブランデーは8年程度熟成するとVSOPになり、それ以上になると、やはり喉への当たりがまろやかになる。
バーボンも同じです。
その中で僕が「これはすごい」と思ったのが、メーカーズマーク。
スタンダードクラスなのに、スコッチの12年物クラスに感じるほど、まろやかで飲みやすい。
以前、山崎が品薄だったころ、当時サントリーの社長だった新浪さんがメーカーズマークを勧めていたことがありました。
それを見て、
「あ、この人、わかってるわ」
と思ったのを覚えています。笑
そんな経験があるので、今回の日本酒の飲み比べは、僕にとってちょっとした事件でした。
以前、スコッチ界の「ロールスロイス」とも言われるマッカラン12年と同じような酒を探していた時期がありました。
何冊もウイスキーの本を読みながら、かなり執念深く探したのですが、結局「これは近い」と思えたのは、日本の山崎12年と余市12年くらい。
そして、さらに探し続けて、ようやく見つけたのがグレンモーレンジィ10年でした。
今回の日本酒を飲んでいて、ふと、そのときの感覚を思い出しました。
僕の中では、
菊正宗=マッカラン12年
獺祭=グレンモーレンジィ10年
という感じです。
もちろん、これはあくまで僕が飲んで感じた味を、ウイスキーにたとえたものです。
特に菊正宗から感じた、甘納豆のような甘みとコクのあるフィニッシュが、僕にはマッカラン12年を思い起こさせました。
そして今回、いちばん驚いたのがここです。
ウイスキーでは、スタンダードと12年物を比べれば、基本的には価格差に見合った味の差があります。
ところが日本酒では、同じカテゴリーの中で、しかも価格差が約5倍もあるのに、味の優劣が簡単には決まらない。
しかも今回は、製法も酒の位置づけも大きく違います。
それなのに、実際に飲み比べてみると、
「高い酒のほうが必ずうまい」
という結果にはなりませんでした。
むしろ僕の場合、ギンパックのほうがうまいかもしれない。
これは、かなり面白い発見でした。
カステラでいうと「福砂屋 vs 文明堂」
ここまで書いて、また別のことを思い出しました。
昔、長崎出張が月1回くらいあった時期がありまして、そのころはカステラやカラスミなんかをお土産に買っていました。
そこで有名だったのが、福砂屋 vs 文明堂の論争。
僕も実際に2つ買ってきて、食べ比べたことがあります。
周りはみんな福砂屋を推す。
でも僕には、どうも福砂屋の味が薄く感じられた。
僕は文明堂のほうがうまいと思ったんです。
ところが、みんな黄色いパッケージの福砂屋を推す。
いやいや、みんな同時に食べ比べてみてください。文明堂のほうがうまいですよ。
……と、当時は思っていました。笑
今回の獺祭とギンパックも、僕の中ではちょっとそれに近い。
どちらも日本を代表するブランドです。
そして、味については、福砂屋と文明堂くらい甲乙つけがたい。
ところが価格は約5倍。
だから今回の飲み比べで僕が感じたのは、
「高い酒が勝つとは限らない」
という単純な話ではありません。
むしろ、価格やブランド、酒のカテゴリーだけでは分からない「味そのもの」の面白さです。
実際に同じ条件で、同じ量を、同じ食事と一緒に交互に飲んでみる。
そうすると、思い込みとは違う結果が出てくる。
今回の飲み比べは、そこが一番面白かったです。
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