DXとは?わかりやすく

著者は2名。スタンフォードMBA、ボストンコンサル出身の富山氏。富山氏は産業再生機構COOでカネボウなど再建してる。もう1人は中央青山監査出身の望月氏。様々な企業のDXに携わる実務者。共著。

『昨今ブームのDX(デジタルトランスフォーメーション)、しかしその本質を理解してる人は少ない。単なるお題目やツールの導入にとどまってしまっている企業も多い。DXとは何か?正しく理解する』

DXとは何か? ほんとの意味

ICTやITがさすがに古びてきたので、代わって登場してきた関連事業者によるマーケティングバズワード。

AIやビッグデータなど、ITという概念で包摂しきれない要素がデジタル革命の中心になる流れの中で、ICTと同じくITという言葉もやや陳腐化したため、特に業者筋はこれを「DX」と置き換えて営業マーケティングを行うようになっている。

現在、世の中で「DXプロジェクト」の名前で遂行されているプロジェクトのほとんどは、かつての「IT化プロジェクト」と同じ意味。すなわちデジタル技術による業務の効率化、生産性向上を目的としている。

・DXが新たなバズワードとして登場頻度を上げてきたのは2019年あたり。

・DXとはデジタルテクノロジーによってもたらされる変化のこと。

・一般的に「DX]として取り上げられるのは、アナログをデジタル化するといった基本的なことから、AIやIOTの導入、あるいはブロックチェーンやVR・ARの活用、はたまた自動運転や遠隔操作まで様々なものがあるが、どれも一言で言えば「デジタルで変わる」

・DXは「業務改善ツール」を当てはめればすぐに完成するものではなく、そもそもの業務や実現したいことを明確にしたうえで、それをデジタルの力を使って実現していくもの。

・「DXで新規事業を」は夢物語。基本的には既存事業の磨きこみ。「あそこに無駄があるよな」「あれは明らかに人間がやるよりもデジタルのほうが正確だよな」「あのデータをデジタル化したらもっと営業に使えないかな」というシーン。

・断捨離とセットで行う。古いものの断捨離なくしてDXするとより複雑化する。工数がむしろ増えてしまうと本末転倒。

・DXとはデジタルの力を借りて更なるリソースを捻出するという、将来のための「借り物競争」である。無駄を排除して人的、資金的なリソースを捻出し、そのリソースを使って新たなチャレンジをする。新たなチャレンジのうちいくつかが実を結び、やがてそれは既存領域になる。その既存領域でDXを推し進め、次の新たなチャレンジのリソースを創出する。

・DX=新しいキラキラしたもの、と思ってる人たちは多い。「DXはリソース捻出のための手段である」という話をすると、「DXって結局、コスト削減なんですか?」「効率化なんてもうやってますけど」という冷めた反応が返ってくる。

・DXとはデジタルの力を使うことで、今まで10分かかっていた作業が1分で終わるようになり、その浮いた時間でより本質的な仕事を行う。コスト削減というよりあくまで「プラスを生み出す活動」。

・デジタル化してもクリエイティブな作業を代わりにやってくれるわけではない。ドラえもんの道具を思い出してほしい。道具というのは叶えたい何かを支えてくれるものであり、どうすべきかを教えてくれるものではない。



IOTとは? 儲かるのは誰?

著者は政府のIOT推進コンソーシアムの座長をやってたが、曰くこれほど曖昧な言葉はない。「モノがインターネットでつながること」という意味。

それ自体で新しいビジネスモデルが生まれたとか、事業収益が格段に上昇したという話はめったに聞かない。ほとんどがコスト増のわりに、顧客から見ると機器操作が複雑になるだけで終わる。

結局、IOT自体で確実にもうかるのは、そのインフラとなる通信事業者とGAFA型プラットフォーマーである。

ICTとは? デジタルネイティブは使わない古語

デジタル革命がコンピュータ産業の枠にとどまっていた時代の古語。情報とコミュニケーションの技術発達がデジタル革命のエンジンであったことは事実だが、その後ネット、モバイルなどの技術、さらにAI、データサイエンス、クラウド技術にシフトしてる。世代が下がるにしたがってこの言葉が使われる頻度が減り、いまやDXでひとくくりにされる。

AIとは? 日本型雇用ではむずかしい

ほとんど付加価値を生まない技術資産。これを開発するために大量のAI開発者を雇うと、10年後にまとまった不良人材資産になる危険性大。

技術の進化も、若い才能への世代交代も猛烈なスピードで進むAI開発の世界は、本質的にオープンイノベーションが主流。バイオテクノ・ゲノムフェーズに入って創薬の世界が一変したのと同じ。

古い工業化モデルの発想でAIを開発実装しても、ビジネス上の付加価値を生まない。AI開発人材を日本型雇用で大量採用することを考える時点で終わっている。

ビッグデータとは? その危険性は?

質量のないガラクタの山。時に個人情報のような火事の原因も含んでいるので、ビッグになるほど大災害を引き起こす危険性がある。

データというのはそれ自体が価値を生むものではない。ビジネス上有用なデータ、あるいはデータセットは、希少価値の鉱山と同じで、集めたデータの中にそうそう高い含有率で含まれてはいない。

RPA とは? 会社の「ぶら下がり健康器」のこと

企業にとっての「ぶらさがり健康器」。会社の健康に有効なお手軽ツールかと思ったら、実は辛いので使われなくなる。

人員削減ツール。従来業務のRPAへの置き換えは、その移行自体に相当な負荷がかかるのと、業務全体の変容、特に定型化、標準化を行う必要があるので、人間の側も変容を迫られる。

ジョブ定義を曖昧にして終身雇用のメンバーシップ型で働きながら業務の改善改良を継続する日本的経営スタイルと根本的に相性が悪い。

経理業務は比較的定型化になじむが、「RPAがあるから簿記会計は知らなくていい」と考える勘違い人間を生む。簿記会計がわからなければRPAのアルゴリズムもわからない。なので出てきた数字の意味が経営的に理解できず、経営ツールとしては役に立たない。



自己資本とは? 世紀の大誤訳

自己って誰よ?

Shareholders Equityの世紀の大誤訳。この誤訳が日本企業の30年間にわたる大停滞の一因。

株式会社は法人で人間的な意味での「自己」は存在しない。バランスシートの右側は、左側の資産がステークホルダーの誰に帰属するかを表している。

日本語で自己資本といわれる部分は、元々はシェアホルダーズ・エクイティすなわち株主資本である。

株主会社のガバナンス構造は基本的に「所有と経営の分離」であり、経営者側から見れば株主も外部のステークホルダーなのでこれも「他人資本」なのだ。

だからシェアホルダーズ・エクイティを「自己資本」と呼ぶのはまったくの大誤訳。この大誤訳のせいで、日本の経営者の多くは「自分のカネなんだから好きなように自分で決められるし、借金と違ってその部分に費用、すなわち資本コストという概念はない」と思い込んできた。せいぜい配当がそれに相当すると考えてきた。

その結果、未来投資は金利をはるかに上回る然るべきリターンを生まなければならず、その資金をDX時代のリスクの高いイノベーション投資に回す循環を作る意識が希薄になってしまった。むしろ「長期成長のためには利益、すなわちリターンを犠牲にしていい」というトンチンカンなことを言いだす土壌になってしまった。

イノベーションとは? 世紀の大誤訳

誰かが「技術革新」と世紀の大誤訳をした。

そのためにインベンション(発明)と混同され、日本企業の衰退を加速した悪魔の呪文。

イノベーションという言葉を一般化したシュンペーターは「新結合」という意味でこの言葉を使っている。モノでもサービスでもビジネスモデルでも構わないので、世にあるものの「パクリの掛け算」で世界は変えられるという話。

この30年間の勝者は、まさにパクリの掛け算の名手たちだ。本当に自分でオリジナルで発明したサービスはどれほどあるか。他方、イノベーションをモノの発明と思い込んだ多くの日本企業は、迷路にはまり衰退していった。

TRF / iNNOVATiON

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