日本酒の入門書。入門書と言いながら、これだけマスターしたらもう十分で、あとは種類をたくさん飲んで味覚の経験値を上げるだけかと思いますが。
これまで読んだ日本酒本は、製造工程を丹念に紹介するパターンか、全国の様々な銘柄を1冊全部使って紹介するものか、だいたいそんな感じの本が多かったです。これはじつは面白くない。製造工程にそんなに興味はないし、銘柄をこれでもかと紹介されても、どれがおススメなのかよくわからんし。
メディアファクトリー(角川)のこの本は、2p見開きで一項目。日本酒の数々の疑問やハウツーを、Q&A方式で答えていきます。右ページが文章で、左ページが表やグラフの構成になっています。
さらっと読んでボツ本にするつもりでしたが、面白かったので以下に読書メモを。
目次
日本酒は全部で何種類ぐらいあるか
2010年に日本国内にある酒造業者数は1564。実際に清酒を製造しているのは1260。1260の業者が販売している日本酒の銘柄数は4~5万種類。清酒全体で46万キロリットル。そのうち本醸造酒や純米酒、吟醸酒などの特定名称酒は3分の1の15万キロリットル。特定名称酒の区分は以下。特定名称酒以外は普通酒と呼び7割を占める。
⇒本醸造酒のアルコール添加は白米重量比で10%以下だったんですね。これだったら純米酒にこだわらなくても、本醸造酒もありかも。とはいえ白米重量に対してなので液体になったアルコール添加率でいうと、25%以下に相当します。結構多いなあ。ワインなんかの果実酒のくくりはアルコール添加率は10%以下なのに。。ちなみに普通酒は白米重量比で50%以下。安いアル添酒(普通酒)は頭が痛くなったりよく酔うような気がします。
日本酒の流行推移
1980年代に「淡麗辛口ブーム」が到来。「越乃寒梅」や「上善如水」などすっきりサラサラした味わいのものが売れた。ブームは長く続いたが1994年に山形県産「十四代」から「芳醇旨口」が流行りだす。無ろ過の生酒もこの頃流行した。2010年代にはほどよい酸味のあるものが流行。スパークリング系や洋食とも合わせやすい日本酒が好まれ始めている。
都道府県によって日本酒の味は違う
大雑把なイメージとして、北国の日本酒はすっきりとして辛口な「淡麗辛口」の酒が多く、南の県にはしっかりしたコクと味わいをもつ「濃醇甘口」の酒が多い。ただしあくまで大雑把であり、個別には平成21年度に国税庁が発表した「各県甘辛度・濃淡度(平均値)」を参照。
国内で一番日本酒を造っている都道府県はどこか
米どころの新潟ではない。兵庫県。日本で造られる日本酒の30%が兵庫県産。灘が国内最大の日本酒の生産地。この地方で湧き出す「宮水」はカリウムを多く含み、鉄分が極端に少ない酒造りに適した水。さらに最高級の酒造好適米の「山田錦」の8割が兵庫県産。ベストテンは下記を参照。ちなみに杜氏集団は全国に分散されているが、三大杜氏集団は、岩手の南部杜氏、新潟の越後杜氏、兵庫の但馬杜氏。
日本酒と和食の相性
日本料理には日本酒がよく合う。茶の湯の懐石でも日本酒の振る舞いは欠かせないし、会席料理は日本酒を楽しむ料理である。
日本料理には魚卵を使ったレシピが少なくないが、生臭さがワインには合わない。しかし日本酒にはよく合う。例えば、イクラの醤油漬けには辛口の純米酒。酒盗にはコクのある本醸造酒。白身魚の刺身には淡麗辛口。
日本酒に相性のよい食材や料理
基本的には和食。刺身なら白身魚は淡麗な飲み口の本醸造酒。中トロなら純米酒の芳醇なもの。アナゴなど濃厚なタレのかかった魚には、熟成感のある日本酒。
豚を煮込んだ肉料理にも日本酒は合う。ただし焼肉やレアで焼いたステーキ、血の滴るローストビーフなど、赤くて血が出るような肉料理や食材に関しては日本酒はマッチしない。赤ワインに含まれるタンニンのような「渋み」の要素が少ないから。
たいていの日本酒に合う食材は、ずばり発酵食品。野菜の漬物や塩辛、魚卵を使ったつまみ、チーズなど。
日本酒でもてなす際の器と順番
乾杯:スパークリングタイプ シャンパングラスで
前菜:淡麗辛口タイプを冷やで 塗りの盃
主菜:濃醇甘口タイプを燗で 徳利とぐいのみ
食後:熟成された古酒 ワイングラス
利き酒で使われる言葉で味や香りを表現する
酒の風味を表現するには、「香り」と「味わい」を強弱で表すのが基本。香りの強弱は「穏やか」と「華やか」。味わいの強弱は「スッキリ」と「濃醇」で表す。この4つを組み合わせることでざっくりと酒の特徴を表すことができる。
香りには2種類ある。「上立ち香」と、酒を口に含んだときに鼻に抜ける香りの「含み香」。味は「甘・酸・辛・苦・渋」の5つが日本酒の味の構成要素とされ「五味」といわれる。
もっと具体的に表現するには、下記を参照。
これだけは飲んでおきたい日本全国の銘酒:基本銘柄
石川県:天狗舞(純米大吟醸50、720ml、1733円)
単にすっきりとした酒ではなく、しっかりとした味わいがある。どんな料理との相性もよい。軽快な旨みときれいな酸味のある純米大吟醸がおすすめ。しかしどんな種類を選んでもでも間違いない味。
高知県:酔鯨(純米吟醸吟麗、720ml、1712円)
コストパフォーマンスがよく、どこでも手軽に買える。他の酒に比べて酸味が強いので、洋食との相性がよい。
宮城県:浦霞(純米酒浦霞、720ml、1260円)
良心的な値段で何を飲んでも旨い。広がりのある味わいの純米酒もいいし、すっきりした辛口の本醸造酒をちょっと燗すれば、魚介類との相性も抜群。特にマグロなどと合わせたい。
長野県:真澄(本醸造特選真澄、720ml、1029円)
リーズナブルな普通酒を選んでも旨い。特に燗で飲むのがおすすめ。素朴な味の家庭料理との相性がよい。
これだけは飲んでおきたい日本全国の銘酒:希少価値のあるもの
山形県:十四代(特別本醸造酒 十四代本丸、1.8L、2047円)
上品な果実を思わせる甘味があり、軽さも厚みもある珠玉の酒。
島根県:王禄(超王禄 本生、720ml、1575円)
コクとキレがある辛口の純米酒。冷酒、冷や、ぬる燗といずれもいける。
静岡県:磯自慢(純米大吟醸 愛山 中取、720ml、5145円)
磯自慢酒造は普通酒はもちろんすべての酒の味が安定しておいしいが、完成度が高いのが大吟醸愛山中取。軽く冷やして飲む。
愛知県:醸し人九平次( 醸し人九平次純米大吟醸 雄町、720ml、1737円)
すべての酒が純米吟醸以上の仕込みで、その味はパリの三ツ星レストランにも置かれる。売れた果実の味をテーマに造られた酒は、濃密かつ爽やか。
酒屋に行って♪
あの酒を飲みほせよ♪
ストレイキャッツでドリンク・ザット・ボトル・ダウン♪