なぜ山口組は3つに分裂したのか?~「三つの山口組 /藤原良」より

3つに割れた山口組。何があったかよく知らなかったので読んでみました。

かんたんな流れは以下。

まず司忍組長が逮捕。その後高山若頭が山口組を仕切る。この頃から拝金主義になって、名古屋方式の山口組は上納金が厳しすぎることになる。

これに嫌気がさして、山健組という神戸の名門が脱退。「神戸山口組」を立ち上げる。三代目田岡組長のころの山口組なら、去る者は追わず。だが名古屋の六代目山口組は、絶縁処分した。山口組の伝統とは違う処分。

その後、両方の幹部から援助を受け、再統合を織田という神戸山口組の幹部が目指す。あちこちに根回しをするが、両方から受け入れられない。

織田は神戸からは「裏切者」、名古屋からは「何を今さら」と、宙ぶらりんになる。そして神戸から絶縁処分されたのち、「任侠山口組」を立ち上げる。

以下にその他の要約読書メモを。



オレオレ詐欺が増えた原因

法律や条例の効力で暴力団は衰退した。町の不良少年たちは金欲しさに、オレオレ詐欺組織など特殊詐欺集団に加入するようになった。

「暴力団より詐欺師をつかまえる方が手間がかかる」暴力団員は所轄警察に登録されている上に、看板を掲げた事務所もあるので、詐欺師たちのように居場所がわからない、という状態になることはない。犯罪を犯せばかなり高い確率で警察に逮捕されてしまう。

いまの不良は詐欺師の道を選ぶ。理由は「儲かるから」そして「捕まりにくい」である。

山口組再統合が失敗した理由

織田若頭代行が描いた再統合計画は、再統合というより六代目山口組への出戻り計画であった。対等な立場での均等な合体ではなく、頭を下げて戻してもらうというイメージになる。さらに高山六代目若頭が不在(刑務所)状態では環境不足。両方の組から統合資金をつまみ、「どうするのか?」と聞かれ、板挟み状態になった。

やがて織田若頭代行のの再統合計画は、2つを1つにすることより、自分の若衆を引きつれ、六代目山口組に再加入するという方針に代わった。

ここで計画に狂いが生じる。名古屋の三代目弘道会内部が大反対した。「なにを今さら」と。この一言は弘道会を起点に、六代目山口組全体から沸き起こる。

神戸山口組でも織田の身売りが知れ渡り、絶縁とされた。神戸から絶縁され、名古屋からは再加入認めず、と宙ぶらりんになり独立する。



ケンカの通報は、報告の仕方で警察の対応が変わる

通常街中でケンカの通報時は、近くの交番のお巡りさんが自転車で駆けつけ、その状況を確認してから次の行動に入る(応援を呼ぶとか)。

通報の段階で、そのケンカが抗争と関係ある可能性が高いと判断された場合は、防弾チョッキをつけて拳銃を携帯した警察官が、バスで現場に急行してくる。

居酒屋で酔っぱらい同士がケンカして、近くにいた人が携帯で通報した場合、たまたま「暴力団風の人が」と付け加えただけで、数分後には武装した警官隊に包囲される可能性がある。過去の抗争現場で、私服刑事が敵対組織と間違われ射殺された経緯があるため。

ヤクザの歴史

ヤクザの起源を「博徒」とするなら、日本書紀や万葉集によると、飛鳥時代、奈良時代にその原型が形成され、博打の流行とともに平安時代(794年~)に定着化した。

当時の博打はお寺や神社の広間で開帳された。持統天皇が「スゴロク禁止令」を発令し、公共賭博だけが許されたため。公共賭博はお寺や神社の広間で開帳された。

博打のあがり銭は、神社やお寺の修復費や祭事の運営費にされた。博打の元銭のことを「テラ銭」というのは、こういった歴史的背景がある。

博徒は「ヤクザ」といわれる。ヤクザは神社やお寺の公共賭博の警備、振り師といったスタッフとして働く。その内訳は、無職者やならず者たちだったという。

無職者やならず者は野放しにすると悪党化する。今でいう賭場荒らしをされるなら、賭場のスタッフとして雇用したほうがいいという天皇行政。

現代ヤクザ事務所に提灯や神棚があるのは、神社やお寺のスタッフだったという古来からの伝統によるもの。

公共博打以外は禁止されていたとはいえ、娯楽に乏しい庶民のあいだでは、ヤクザによって密かに賭場が組まれた。ヤクザが定着化した平安時代のことである。

ヤクザが庶民の人気者だったのは、庶民の要請にこたえる形で、娯楽である賭場を運営したから。

~中略~

ヤクザの呼称は、博打で負け札の「八」「九」「三」からきた。賭場のスタッフは無職やならず者だったので、そういった人々のことを「八」「九」「三」の隠語を用いて、総じて「ヤクザ」と呼んだと考えるのが自然だ。

賭場スタッフでなくても、ヤクザと呼ばれる人達がいた。こういった人たちは江戸時代になってから、今でいう消防隊「火消し」、警備職「岡っ引き」として行政側に認定採用された。これをもってヤクザの発祥が江戸時代とされることもある。

近代社会に置き換えると、競馬場スタッフや消防庁、警備会社となる職業が、むかしはヤクザだった。

なわばりを荒らすな♪
痛い目にあいたくなかったら 失せろ♪
死にたくなかったら逃げるんだ♪
こんなことのために命を懸けるな♪
ヤツらはお前を探してる♪

マイコーのビート・イット♪ ずっと殴れって意味だと思ってました。
ビートイットは、逃げろ、失せろ、ずらかれっていう意味だそうです。
抗争なんかで命を無駄にするなっていう、まっとうな歌です。

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