「脱資本主義宣言・鶴見済」書評と要約

完全自殺マニュアルの鶴見済の新作。この20年で5冊目。12年ぶりの新作だそうです。そいう意味では、いろんなものが凝縮されている。旬の多作の人の本を読むより、重みがあるような気がします。

僕たちは後進国から資本の力でいろんなものを搾取して、この豊かな生活を享受しているようです。普段何気なく使い捨ててるものは、地球の資源を浪費したり後進国の犠牲の上に成り立っています。しかも経済成長という金科玉条のため、昨日より今日の消費を益々増やしていっています。これが正しいのかと言われれば、正しくない。わかっているけどこの便利な生活はやめられないんですよね。

自然は循環する。最後は「葉っぱのフレディ」を思い出させるような作品です。

以下に読書メモを。



服の自給率わずか4%

「モードは死ななければならないし、ビジネスのためには早く死ぬほうがいい」
byココシャネル

服は必要でもないのに買われ、まだ使えるのに捨てられる異常な商品の代表だ。日本では年間117万トンの服が買われ、同時に106万トンが捨てられる。1人あたりでは、およそ9キロ買って、8キロ捨てていることになる。どれくらいの量か?平均的な長袖シャツの重さを目安に計算すると、毎年シャツを42枚買って、38枚捨てていることになる。家電の年間廃棄量60万トンの2倍近い。

それなのに、日本の服の自給率は4%でしかない。輸入品の8割は中国からだ。日本で着られなくなった服の8割は燃やされていて、2割しかリサイクルされてない。

こんなことをしていれば服の素材を作る側はたまらない。綿花栽培では大量に水を使う。綿花輸出量世界3位のウズベキスタンは、世界4位の湖アラル海が10分の1に干上がった。カネのためモノカルチャーを押し付けられたものの悲劇だ。

アルミはリサイクルの優等生か

日本はインドネシアに巨大なダムと水力発電所、アルミ精錬工場を84年に4千億円以上かけて建設した。その費用はほとんど日本側が貸し付け、工事も日本の建設会社が請け負った。発電した電気もほとんどがアルミ精錬に使われた。

精錬されたアルミはすべて日本へ輸出されることになった。インドネシアが請け負うのは、電力と工場労働と、日本への借金である。アルミの輸出で稼いだカネも、その借金の返済に使われるのだ。日本で公害問題になったフッ化水素もインドネシアに押し付けられた。それなのにインドネシアにはアルミ缶もアルミサッシも、自分たちで発電した電気も行き渡ってない。インドネシアの副大統領からは「まったくの損害だった」と非難されている。

日本はブラジルのアマゾン川流域にも9千億円かけアルミ精錬工場と発電ダムをつくった。東京23区がすっぽり入る巨大さである。

我々が5日に2本使い捨てるアルミ缶は、このような犠牲の上になりたっている。リサイクルの優等生という言葉で覆い隠しながら。

自動車王国

ロサンゼルスは30年代半ばまでは当時世界最大の地下鉄と郊外電車の鉄道網をもつ、緑に恵まれた街だった。しかし38年からGMは鉄道会社を買収し、赤字経営を理由に鉄道網をすべて廃止させてしまった。

GMはニューヨーク、ボルティモア、なお米国内45の都市で同じように鉄道会社を買収し電車を廃止させた。こうした方法で25年には84万台だった自社生産台数を、85年には500万台まで伸ばした。

90年代になりようやくノーモアLAが合言葉になり、鉄道のない街LAに鉄道が再び走り出した。

日本の自動車産業

自動車産業は、鉄、ゴム、ガラス、エレクトロニクスなど多くの素材、部品産業に支えられている。また販売、輸送、保険、整備、駐車場、ガソリンスタンドなど、多分野の産業とかかわっている。

日本で自動車産業(関連も含めて)に従事する人は、全就業人口の8%近くに上ると言われている。しかもより間接的な道路の建設まで含めれば、経済波及効果はもっと大きい。

日本の自動販売機

自販機は日本に508万台もあって、台数ではアメリカのほうが上だが、25人に1台という割合も、年間5兆3千億円という売上も世界1である。この売上はコンビニの8兆円、百貨店の6兆円と比べても大きなものだ。

そのうち飲料の自販機が約半数で、電力消費では9割近くを占める。その自販機を一番普及させたのが、現在100万台を設置させているコカコーラ社である。

飲料自販機は年間2兆円も稼ぐ。メーカーはスペースの提供者には電気代だけ負担してもらって売上の一部を渡し、あとの補充や空き容器の回収などはすべて面倒をみている。仮に元が取れない自販機でも、目立っていれば広告塔の役目を果たしている。

外食世界一

日本人が外食する回数は一人当たり196回で、アメリカを抜いて世界一多かった。世界一食事を自分で作らない国というのもまずいが、さらにまずいことに世界で一番マクドを輸入している国でもある。(店舗数がアメリカに次いで世界2位)

サモアの酋長の言葉

たいていの白人がその職業ですることのほかは、何もできない。頭は知恵に溢れ、腕は体力に満ちているが、自分の寝むしろを横木にかけることもできなかったり、食器が洗えなかったりする。



なぜ新・自由主義というのだろう。旧・自由主義とはなにか

18世紀後半 1929年 1980年前後 世界恐慌
アダムスミス自由主義 ケインズ主義 フリードマン新自由主義

旧自由主義とは18世紀イギリスのアダムスミスが唱えた、市場や自由貿易を重視して政府の介入を抑える自由放任主義を指す。「神の見えざる手」に任せればうまくいくという説。

1929年の世界恐慌で見直しを迫られ、大きな政府を目指すケインズ主義にとって変わられた。ケインズは国家が介入して失業や不況を解決すべきだとした。

しかしその大きな政府主義も国の出費がかさむなどの問題を募らせてきた。70年代にはフリードマンやハイエクなどのノーベル経済学者が再びケインズを批判して、極端な自由放任主義を唱えた。80年ごろからサッチャー&レーガンが取り入れた。

2008年にはじまった世界恐慌は、新・自由主義で採られた金融自由化政策のせいで、いまや小さな政府がいいどころか、政府が大金を貸して企業を助けなければ、我々の社会が壊滅するところまで追い込まれている。

人の歴史はあまりに短い地球の歴史を1年間に当てはめる

1月1日 地球の誕生
2月17日 生物の誕生
5月31日 光合成生物誕生
12月14日 哺乳類出現
12月31日PM11:37 ヒト出現
12月31日PM11:59:58 産業革命

永遠の経済成長などは人間だけが目指しているもの。それを含んでいる自然界は、相変わらず増えも減りもしない物質をグルグルと循環させてエネルギーをやりとりしている。

水の輸入量

安全性と味の評判がいい日本の水道水。日本は42万キロリットル、1リットルのペットボトルにして、4億本以上の水を毎年輸入している。水道水なら5リットル飲んでも1円に満たない金額だ。わざわざフランスから輸入しなくなれば、ペットボトルや輸送にも使われる石油の節約になる。

大豆(枝豆)の自給率5%

日本人にとって米につぐ重要な農作物。味噌、醤油、豆腐、納豆、枝豆、きなこ。。ソウルフードといっても過言ではない。1950年ごろにはもちろん自給率100%だったが、61年に輸入が自由化され米国の補助金でダンピングされた安価な大豆に駆逐された。国産大豆の3分の1の価格だった。

問題はモンサント社の遺伝子組み換え大豆。自社の除草剤ラウンドアップが強力で、作物まで枯らせてしまった。そこでモンサントは除草剤の毒性を弱めずにそれを浴びても枯れない作物を作った。(遺伝子組み換え大豆というと、意味がわからないので、農薬大豆、除草剤まみれモンサント大豆とかよんで注意喚起すべきか)

日本の輸入大豆の7割近くは米国からのもの。米国大豆の9割以上が遺伝子組替え品種で、その大部分が除草剤ラウンドアップ耐性大豆だと言われる。

豆腐や納豆でこの農薬大豆を避けても、加工食品には農薬大豆(モンサント大豆)が混じっている。もちろんモンサントはTPPに日本を引き込む急先鋒である。こんなものを完全自由化されたらたまらない。

C.C.Rでコットンフィールズ♪

レスポンシブ広告

シェアする