サウジはイエメンからよくドローン攻撃を受けています。
日本は2018年で38%の原油輸入をサウジに頼ってます。サウジが混乱すると結構やばい。
なんでサウジがドローン攻撃されるか知らない人が多いと思うので、何度か記事にしてますが再掲します。イエメンとかの話は猫組長が詳しいです。あと佐藤優。彼らの本に書かれていたサウジとイエメンの争いについて以下に簡単にまとめます。
なぜサウジとイエメンは対立しているのか?
中東の覇権をサウジとイランは争っている。サウジはスンニ派、イランはシーア派というイスラム教内の宗教対立。
イエメンで代理戦争があった。
イエメンの反政府組織フーシをイランが支援。イエメンの現政権をサウジが支援。
2015年イエメン大統領辞任にともないフーシが全土を実効支配。直後に成立した暫定政権を支援する目的でサウジがフーシを空爆。2016年からフーシはイエメン内からサウジへのミサイル攻撃をはじめる。2019年3月にはサウジの首都リヤドにミサイルが着弾。死者も出た。
サウジのムハンマド皇子は「サウジは核爆弾を持つことは望んでないが、イランが核兵器を開発すれば、それに従うことになる」と表明した。
反米感情が強いアラブ社会では、イランの影響力がレバノンやイラクへとますます拡大。サウジはシリアにおいてもイランに対抗して反アサド派を支援していたが、撤退でまた影響力を失うことになった。
中東ではイランによるサウジ包囲網が出来上がりつつあるのが現状。追い詰められたサウジがイランに対して実行手段にでる下地は十分になった。
猫組長、原油購入イエメン訪問記
当時金融ヤクザは原油の場合、買い手側が多かったが、ただ独り売り手側に向かう。「安い原油を現地へ買いに行って、欲しがってる国へ売ればいいじゃないか」
サウジに行くとここでもまた、「ウチのような大会社は個人ブローカーに売らない」と。「イエメンにアロケーションホルダーがいて、ここは勝手に出せるから契約できるよ」イエメンのある部族長を紹介してくれた。アロケーションホルダーとは、油田から原油を採掘して販売する権利を持つ人。もちろん採掘権と販売権は独立している。
ここにたどり着くまでだいたい1500万円ほど使う。自分の足で稼いだ貴重な情報。
イエメンにはサウジの石油の権利をもった部族がたくさんいる。不思議だ。なぜか?反サウジ勢力に抵抗してる部族がイエメンにはいる。敵の敵は味方ということでサウジが援助してる。しかし武器供与や直接カネを渡すと問題がある。なので石油の権利を与えている。「勝手に注文とれば、売れる石油を出してやる。コミッションをくれてやるから、それでがんばって戦えよ」
イエメンの入国は危険。フーシ派のスローガンがある。「神は偉大なり。アメリカに死を。イスラエルに死を。ユダヤに死を。イスラムに勝利を」これをアラビア語で暗唱できるようにしていた。拘束された時にこれが言えるか言えないかが生命の分岐点。
カネは必要。一般的には現金持ち込み可能額は2万ドル。ただし現金携帯輸出許可をとれば2000万円まで問題ない。相手国の制限を超えれば事前許可を取る。
ジャーナリストはなぜ殺されるのか?報道目的で危険なエリアに入る。相手にとって何の得もないから。猫組長は利益目的。拉致して殺すより乗っかって一緒にカネを儲けたほうがいい。
とうぜん彼らはAK47で武装していて、現地入りすると銃を持って囲まれる。檻があって10人ほど入ってる。どうするか聞くと数がまとまったら砂漠に捨てに行くと。
現地ガイドの料金はフルコストで3万円。現地の平均月収が当時で2万5千円。そこに個人的なコミッションをプラスする。「このビジネスを成功させたら、あなたたちにこれだけあげましょう」インセンティブをつけると、何があってもこの人を守ろうとしてくれる。インセンティブは試算表にしてあって、それをみせて相手が納得したらサイン。試算表はひな形がある。
ガイドは国境までは多いが、国境を通過すると一気に数が減って4人ぐらいになる。
ようやく60歳ぐらいの部族長に会う。出迎えも盛大。ドライに商談するのではなく、イエメンの場合は信頼関係を築くことから。会って握手して、ご飯を食べた時点でビジネスはほぼ終わっている。
部族長は「戦う資金をねん出するために、いくらでも売ってやる」とうれしそうだった。先方とこちらの利害は完全に一致。
巨額な資金はどうしたか?日本の「ポン手屋」みたいな「BC屋」が世界にはあって、それを利用した。BC(バランス・サーティフィケート)屋は手数料さえ払えば、いくらでも残高証明を出す。イエメンの部族長から委任状を手に入れる時も使った。
仲介するだけでも、買い付け資金を証明できないと信用されない。350億円のBG(バンクギャランティ)を見せて取引の承認を得た。このBGつくるのに使った金は約800万円。シティバンクが発行した本物だが、中身はスカスカのポン手と同じ。
イスラム教の各派閥まとめ
イスラム教はスンナ派9割、シーア派は1割。スンナ派は最高指導者を選挙で選ぶ。シーア派は血統子孫で選ぶ。後継者問題で分離した。
次にスンナ派は以下の4つに分かれる。
①ハナフィー学派
イラク西部、トルコ、シリア、中央アジア、エジプト西部、南アジア。
②マーリキー学派
アラビア半島東部、北アフリカ。
③シャーフィフィー学派
イエメン、イラク中部、エジプト東部、東アフリカ、東南アジア。
④ハンバリ学派
カタール、アラブ首長国連邦、サウジアラビア。
①~③は世俗の思想や伝統と折り合いをつける傾向が強いので、そんなに危険はない。
④のハンバリ学派が危ない。イスラム過激派やテロはほとんどハンバリ学派から出ている。この学派は祖先崇拝や聖者崇拝を一切しない。コーランとハディースしか認めず、この2つをベースとしてできたシャリーア・イスラム法によって、世界はたった1つのカリフ国家で統治されないといけないと考える。
サウジアラビア人の酒と女について
ハンバリ学派の1つであるワッハーブ派を国教としている国がサウジアラビア。ワッハーブはサウード家という部族の王様と協力してワッハーブ王国をつくり、これが後のサウジアラビア王国の素地になった。サウジアラビアは「サウード家のアラビア」の意味。
サウジアラビアの王族は堕落している。ウイスキーを飲んで酔っ払う。コーランではアルコールは禁止されてる。でも彼らにいわせると、コーランで禁止されてるのはブドウからできたアルコール飲料で、ウイスキはブドウを原料としてないから問題ないと。
イスラム教は売買春は死刑。しかも死刑方法が残酷で石打ちの刑。卵より大きく拳よりちょっと小さい石を山盛りにして、それをみんなで投げて殺す。そうすると鼻が折れ歯が折れ目玉がつぶれる。それは苦しい死に方をする。
でもロンドンのエスコートクラブに行くとアラビア語表記がある。客はサウジアラビアの人が多いと。つまりサウジアラビア人はロンドンで買春してる。
石打の刑にはならない。なぜならロンドンにあるのは「結婚あっせん所」。イスラム教は結婚のときに必ず離婚の条件に付いて取り決めて契約しないといけない。
この契約を逆手に取ったのが「結婚あっせん所」。聖職者が経営してる。それで写真を見せて「はい。この娘は結婚時間2時間、慰謝料は5万円」という説明がある。これを「時間結婚」という。イスラム教では4人まで結婚できる。金持ちが3人と結婚して、4人目は空けておいて時間結婚をする。なので600回結婚したとかいう人もいる。
ほとんど国の体をなしてない。税金もなければきちんとした国会もない。サウジアラビア国民には国がオイルマネーからぜんぶ生活費を出してくれる。汚い仕事、つらい仕事は、すべてイエメン人やパキスタン人にやらせて、サウジアラビア人は公務員として遊び放題。
なぜイランは制裁されるのか?
イランのアフマディネジャード元大統領は2005年に、イスラエルを地図上から抹殺するという公約を掲げた。それを現実にするために核開発を行いミサイルを製造した。イランのミサイルはノドン2号をコピーしたシャハブ3。射程距離は2000キロ。イスラエル全土を射程圏内に収めている。
イランのイスラム教徒はシーア派。シーア派の中の12イマーム派。12イマーム派の人はこの世の終わりに世界最終戦争が勃発してハルマゲドンになると考える人たちがいる。アフマディネジャード元大統領とか。
12代目イマームは874年にお隠れになって、今日までずっと現れてない。
諜報の世界の常識では、イランが核兵器を持っていると確認されたら、パキスタンの核弾道をサウジに移動させると考えられている。パキスタンの核開発のお金を出したのがサウジ。オーナーの要求に応えざるをえない。
そしてサウジが核兵器を持てば、湾岸諸国、アラブ首長国連邦、カタール、オマーン次々に核兵器を持つ可能性が出てくる。核の拡散で大変な緊張状態になる。
それを止めるために、イランの制裁を強化した。イラン産の原油を誰も買わなければ、イランの外貨準備高は6カ月程度で枯渇する。そうすればイランの核開発は阻止できる。それができなければ、人類は核を全員が持つという新しい歴史の段階に進むことになる。
砂漠のブルースをどうぞ。「ミュージックマガジン」のアフリカ音楽特集で5位の人。
グラミー賞ワールドミュージック部門受賞バンド。「Tinariwen /水は命」です。「21世紀のワールド・ミュージックの最高傑作」といわれてるアルバム。