マーケットが混とんとしてきてます。
4年ぶりに読んだ塚澤健二の新刊本。さすがの1冊。有益な情報が得られました。
タイトルはチープなんですが、すごい濃い情報がつまっています。JPモルガンで23年間アナリストしてた人はちがう。マクロとかファンダメンタルが頭にすっと入ってくる。カラー多めで、文章もライトで読みやすい。
この記事読んでる人の知識をリスペクトして、かなり端折った要約をしました。わかりにくい場合は本書でお楽しみください。この本は買っても損はないと思います、
以下に読書メモを。
目次
第3の緩和策とは何か。これでダウが上がった。
むかしの経済学は、一般的に金利を上げると景気が悪くなるという。そりゃそうだ。返す利子が多くなるとふつうは借りなくなる。ローンも組まなくなる。経済活動は停滞する。
2つある金利のうち「短期金利」はそれぞれの国の政府(中央銀行)がコントロールしているが、「長期金利」は市場によって決まる。短期債は日銀やFRBが政策として数字を決めれるが、10年債はマーケットが決定する。国が関与できるのは短期金利だけ。
2016年以降、米国10年物長期債利回りは2%をちょっと切ったところから下がらなくなった。なのに株価は急上昇してる。これはおかしい。
1つめの金融緩和策である利下げが止まり、2つめの緩和策である量的緩和(QE)も終わっている。伝統的な2つの緩和策を使ってないのに、なぜ株は上がるのか?
じつは3つめの緩和策があった。それは「イールドカーブ・コントロール」。日本語では「長短金利差」という方法。
3つめの実質的な緩和策として、長短金利差(10年物と2年物の国債利回りの格差)を使う。長短の利回り格差をなくするのが実質的な金融緩和。
どう考えても短期のほうが長期より金利が高くなるのはおかしい。おかしいことは長続きしない。リーマンショックはイールドカーブが正常化して起こった。では今どうなってるのか?
リーマンショック前と同じ状態になっている。金利の話をしようが、マネー量の話をしようが、このイールドカーブの分析をしないかぎり、専門家でもいま何がおきているかわからない。
青はS&P500、オレンジは米国債10年物と2年物の金利差(イールド)。逆相関になってる。
この第3の緩和策をやってないとNYダウは1万6千ドルくらい。つまりイールドでつくってるバブルが壊れると、一気に1万6千ドルまで落ちてしまう。そのときは日本も無傷でいられない。
長期金利と物価は同じような動きをする。アメリカの消費者物価からすると長期金利は4%の水準が正しい。今の金利は2%。物価から見ても下げすぎ。長期金利を下げている力は何なのか(後述します)?
FRBは短期金利上げが実質的な緩和策というのをわかってるので、トランプが何を言おうが上げる。利上げすればするほど実質的な緩和になるから。ということは短期金利を下げると株価は下がる。それをわかってないFRB理事とかは、たまにとんでも発言をする。
18年11月ごろの株価急落の原因は、金利が上がったからではなく、長期金利が上がることで長短金利差が広がって引き締め状態になって起こったのだ。
じつは9割の市場関係者は金利を上げた方が危険と思っている。実はまったく逆で、FRBが金利を下げるとダウが暴落が起こる近未来が待っている。
⇒19年10月31日の米国長期金利は1.69%です。19年10月31日のFRB利下げ(短期金利)は「年1.75~2.00%から1.50~1.75%への引き下げ」です。今回は長短の利回り格差が縮まった=緩和です。だからダウは暴落しない。
なぜ長期金利の上昇は抑えられたのか?
アメリカの長期金利の上昇を抑え込んできたのは「デリバティブ」取引だ。本来はコメの先物とか、農民の生活を安定させる素晴らしい商品。現在は利益追求だけを目的とした投機取引の道具。
まず世界のデリバティブ残高は599兆ドル=約6京円。しかも世界の80.9%(18年6月時点)のデリバティブが金利(債権)デリバティブ。これだれが仕掛けたんでしょう…。自然にはこんなに増えない。債権のデリバティブバブル状態。
わかりやすくいう。金利デリバティブとは債権の先物取引のこと(日本の発行市場では債券発行総額の8割以上が国債)。これを買うということは、債権の価格が将来上昇すると予測してるということ。債権の先物買いが増えれば債権の市場価格は上がる。債券が買われて高くなると金利上昇は抑えられる。
98年のアジア通貨危機のときは全体の60%だったものが80%を超えた。金利は5%だったのが1%台まで落ちてきた。つまりデリバティブを膨らませることで、アメリカは長期金利をおさえてきたということ。
18年に長期金利が急に3%まで上がったのは、債権デリバティブの比率が減ったことで起きた。
「何で物価が上がらないのに金利が上がるの?」ってトランプが言ってた。トランプもわかってない。マネー経済のほうが実体経済より大きくなったことに気づいてない人がほとんど。
いまマネーだけが膨らんで、実体経済の10倍になってる。大きい方が動かせるので、マネー経済が実体経済を動かしてるのが現状。
経済状況どうこうではない。マネーで抑えてきたから、マネーの変化が金利の変化に現れると考えた方が自然。
イギリスのEU離脱がやばい理由とは?
じつはこれまで、イギリスのLCHクリアネットがEU全体のデリバティブの清算機関になっていた。それも圧倒的なシェア。NYウォール街じゃなくて、ロンドンのシティ。
もしイギリスがこのまま合意なくEU離脱したとすると、今まで使っていたデリバティブの清算機関が使えなくなってしまう。その場合、一挙にデリバティブを閉じていかなければならず、それは大変なことになる。
イギリス側はブレグジット後もイギリスの清算機関を使えるよう、早く決めなさいと言ってるが、EU側は結論を出していない。
⇒EUもそこまでアホちゃうでしょ?
ドイツ銀行はどうなるのか?
かつてのリーマン並みに危険なドイツ銀行。ドイツ銀行のデリバティブ残高は5500兆円。世界の6京円のうち、10分の1近くをドイツ銀行がもっている。
ドイツ銀行の株価は上場来安値となる7ユーロ割れまで下落した。マネーロンダリング疑惑、数々の不正や不祥事。
ドイツ銀行の問題はマネロン疑惑じゃなくて、デリバティブ残高。このまま破綻すると世界の金融システムに多大な影響がでる。
どこかの金融機関と統合させる救済策を検討してるが、ドイツ銀を救済できる金融機関が世界にどれだけ存在するのか。
そういう意味では金融破綻が近づいているかどうかを簡単にチェックする方法がある。それはドイツ銀行の株価をチェックすること。株価が5ユーロ以下に下がれば、完全にデリバティブ破綻の秒読みに入ってきたということ。
⇒さすがにメルケルが潰さんでしょ。
なぜアメリカは借金をするのか?シンプルな疑問
アメリカ経済は借金で成りたっている。国も企業も家庭も借金漬け。個人の借金はなんとリーマン前を上回っている。これを支えているのは不動産の上昇と株高。ほんとの好景気じゃなくて、「資産効果」でつくられた張りぼての好景気。
アメリカの企業の債務残高はリーマン前の2倍、6兆ドルまで達した。
もしデリバティブが崩壊して、債権デリバティブ比率が現在の80%ほどから下がっていくと、金利は自然と上がる。金利が上がると、今まで借金している企業も個人も国も破綻する。それがすでに仕掛けられている。それをやろうと思えばボタンひとつでできる状態になっています。
ちなみにアメリカの企業はそんなに借金して何してるの?という素朴な疑問。
「自社株買い」と「M&A」です。
自社株買いは儲かったお金でやるんじゃなくて、銀行から借金してやってる。なぜかというと今は金利が安い。金利がたとえば1.5%とする。自分の事業の営業利益率が5%とする。1.5%のコストで自社株買いをすると、5%の利益を上げられるところに投資をしてることになる。その差額が3.5%儲けられるということ。金利が低いからそれで儲けたほうが手っ取り早い。ROE も上がるし。
M&Aも同じこと。5%の利益を上げている企業があるなら、1.5%のコストかけて借金してでも、そこを買った方が儲かる。
⇒この視点はなかったです。さらに儲けるための借金か。
ドルインデックスが15年周期でピークをつける謎
ドルインデックスとは、ユーロ、円、ポンド、スイスフランなど、複数通貨に対してはじき出した指数。ドル円のように一通貨だけでドルの価値を測るより、正確で信頼性がある。ドルの相対価値がわかる。ドルインデックス=ドルの価値。
基本的にドルはどんどん量が増えているから、価値は落ちていくはず。どういうわけか約15年おきに突然上がって急落する。どうみても不自然。今回は16年12月にピークをつけて1回落ちたが、もう一度上げようとしている。いったい何をやってるのか?
じつは世界からお金を集めるために、無理やりドルを上げている。ドルインデックスは世界の株の中でアメリカの株式が占める比率と連動する。
世界の株の中でアメリカの株式が占める比率は現在50%を超えている。リーマン直後の40%から10%も上げている。
こういう状態を見て、「ドルインデックスがまだ上がる」という人は信じられない。これまでのパターンは、アメリカにお金を引き付けて株を高くして、どこかの時点で急落させるている。
69年、85年、01年、16年と約15年サイクルでピークをつけて丸々と太らせてガブリとやる。十分にお金が集まってから、突然のルール変更を行う。
71年にニクソンショック、85年はプラザ合意、01年は「911」の株価下落。これらのルール変更で、アメリカは貿易赤字と財政赤字を一気に帳消しにしてきた。
要はアメリカは15年に一度、借金を他国に押しつけたり、世界中にばらまいたりすることで、破綻せずにやってきた。
プラザ合意では85年に240円だったけど、10年かけて95年に79円、3分の1まで落とした。では今、なにが起きているのか?
34年前にプラザ合意で日本にやったことを、中国にやろうとしている。元高にもっていって、中国の貿易黒字を消そうとしてる。
日本はあっさり認めたけど、中国はかんたんに認めない。このまま中国が妥協しない場合、ルール変更に出てくる恐れもある。たとえば「新ドル札発行」。
現ドル札との交換比率を下げたり、国外のドル札の新ドル札への交換を禁止すれば、アメリカの借金はあっという間に棒引きされる。予想レベルは2024年までに1ユーロ=2ドル、1ドル=75円。
ドルが下がると、世界からお金を集めきる前にアメリカからお金が流出する。それを食い止めるために当面は必死にやる。18年のレパトリ減税とか。この影響で18年はドルが上がった。
ドルがドカンと下がるシグナルは、ドルインデックス「90」ライン。90を割り込むと危険。18年1月に一度下げたけど、お金を集めるためもう一度戻している。
過去の例からはドルインデックスがピークをつけてからボトムを打つのに約9年間。今回は16年12月にピークをつけたとすると、ボトムは25年前後。
⇒アメリカ、こわいなあ。。
金価格の今後はどうなるの?
安全資産といわれるゴールドはどうか?安全ではあるが、今のところ上がりも下がりもしない。金の価格はアメリカの消費者物価と連動してる。アメリカの消費者物価が上がらないと金も上がらない。金は常に物価次第のコモディティ。
もし仮に金融危機に見舞われて、アメリカの物価が急騰するのであれば、金もその分上昇する。でもそれはまだ先のこと。アメリカが「新ドル札発行」を急に言い出した場合にはありえるが、それ以外はジリジリとしか上がらない。
ただこれからは、株も土地も下がる傾向にある。価値が下がらないゴールドは大いにあり。
それとNYダウと金、一緒に上昇したら、どちらかがフェイク。本来ダウと金は逆相関。NYダウも金も上がっているときは、株価が無理につり上げられている可能性がある。
3月に初めていったPerfumeのライブ。聞いてたアルバムになくて知らない曲でしたが、ファン曰くライブの鉄板曲だそうです。fake it ♪
Perfume9月発売の新作ベスト♪
「むかしの経済学は、一般的に金利を上げると景気が悪くなるという…….」
約50年前、(私の)大学でその様に教わりました…..