90年代ロック・アルバム20選

レコードコレクタ―ズ執筆陣41名によって選ばれた、「90年代のロック・アルバム200」。その中から上位20作品を以下に。

AmazonMusicを貼っていきますので、個々のアルバム評などはAmazonのレビューを参照ください。

20位 ルシンダ・ウィリアムス|カーホイル・オン・ア・グラベル・ロード

19位 ビョーク|ホモジェニック

18位 R.E.M|オートマチック・フォー・ザ・ピープル

17位 レッチリ|ブラッド・シュガー・セックス・マジック

16位 ジム・オルーク|ユリイカ

15位 マシュー・スウィート|ガールフレンド

14位 ラテン・プレイボーイズ|ラテン・プレイボーイズ

13位 ジェフ・バックリィ|グレース

12位 ザ・フレーミング・リップス|ザ・ソフト・ブレティン

11位 トータス|TNT



10位 ギリアン・ウェルチ|リヴァイヴァル

9位 メタリカ|メタリカ

8位 ロス・ロボス|コロッサル・ヘッド

7位 ウィルコ|ビーイング・ゼア

6位 オアシス|モーニング・グローリー

5位 ボブ・ディラン|タイム・アウト・オブ・マインド

4位 ベック|オディレイ



3位 マイ・ブラディ・バレンタイン|愛なき世界

おそらくはニルヴァーナの『ネヴァーマインド』やメタリカの“ブラック・アルバム”と並び、90年代にリリースされたあらゆるロック・アルバムの中でももっとも影響力を持った一枚だろう。いわゆる”シューゲイザー”の先駆となったのはもちろん、オルタナティヴ、ヘヴィ・メタル、ポストロック、チルウェイヴ、アンビエント・エレクトロニカなどフォロワーはきわめて幅広いジャンルにわたる。

爆音のギター・ノイズをポップ・ソングに取り入れる手法は、それこそエルヴィス・プレスリーの昔からロックンロールの基本的な手法だが、実験音楽や前衛音楽の手法がアンダーグラウンドなロックやジャズに導入され、いわゆるノイズ・ミュージックが成立した70年代以降、“ノイズ” とは音楽の既成概念への反語表現であり、しばしば人を不快にさせる雑音”そのものだった。その“雑音〟はやがて一般的なポップ・ミュージックにおいても有効な表現手段のひとつとして定着するが、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインは本作で、ノイズを単なる楽曲上のアクセントや異化効果ではなく、自立した快楽装置として見事に再構成 してみせた。しばしばノイズは暴力性や攻撃性や破壊性のメタファーとして使われるが、マイブラのノイズはしなやかで甘美で官能的で女性的ですらある。ロックのマチズモは徹底的に回避・排除されているのだ。その意味でも彼らのロックは画期的だった。

そもそもチープなB級ガレージ~サイコビリー・バンドとしてスタートした彼らはやがてヴェルヴェット・アンダーグラウンドやジーザス&メリー・チェイン、ソニック・ユースといった先駆的なバンドの影響を受けながら次第にオリジナリティを獲得し、1988年リリースのファース ト・アルバム “Isn’t Anything” でその独自性を確立した。 そして続く本作では、足かけ3年にわたっていくつものス タジオを渡り歩き試行錯誤を重ね、ナマのギター・サウン ドとサンプリングされたギター・サウンドを加工しレイヤして独自の“ウォール・オブ・サウンド”を作り出した。 あらゆるノイズが溶け合い、混ざり合ってホワイトアウトしたようなサイケデリックなドローン音は、通常のポップ ・ソングの形式や、歌詞の意味性や文学性といった制約から解放された、音響の快楽そのものだったのである。その姿勢は、90年代以降のオルタナティヴなポップやロックすべてに影響を与え続けている。

2位 レディオ・ヘッド|OKコンピューター

デビュー・アルバム『パブロ・ハニー』(93年)の先行 シングル「クリープ」がいきなりヒットしたレディオヘッドは、その豊かな音楽性によって早くも時代の寵児へと上り詰める予感があった。とりわけトム・ヨークのヴォーカ ルは、カリスマ性やナイーヴさなどという言葉では単純に片づけられない。そのシニカルな表情を湛えた複雑な表現力は、同世代のなかでも頭一つ出ている印象だった。

そんなバンドが身体性と関わる領域に磨きをかけるのも、 音楽家としての一つのありようではある。事実、彼らは続く2作目『ザ・ベンズ』(95年)でその種の発展を示した。 だが、前作を上回らねばならないという重圧で作業が難航 するなか、プロデューサーがジョン・レッキーに交替したのを機に実験的な音作りや録音の手法も深化の兆しを見せ始めていた。レッキーの助手を務め、一部の曲のプロデュ ースを手がけたナイジェル・ゴッドリッチは以後のアルバ ムでレディオヘッドを支える重要な役割を担うこととなる。

こうして95年の先行シングル「ラッキー」をはさみ、96年夏から録音が開始された『OKコンピューター』は、そのゴッドリッチをプロデューサーに迎えていっそう大胆にジャンルの交配と音響の実験を押し進めている。 レコード会社が前作の反省からバンドの権限を広げ、じっくりと作業に没頭できたのも良かったのだろう。とくにヨークのこだわりから、結果的に本作も完成までに長い時間がかかったわけだが、このときは録音開始前からアルバムの基本構想に揺るぎがなく、作業の多くを音の錬磨に費やせたのは大きい。ビートルズの「ハピネス・イズ・ア・ウォーム・ガン」やクイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」を意識しながら書いたという、異なる曲調のパートを組み合わせた 「パラノイド・アンドロイド」、マイルス・デイヴィス 「ビッチズ・ブルー」のエレクトリック・ピアノを意識しつつ ポップなヴォーカル・ナンバーとして完成された「サブタレニアン・ホームシック・エイリアン」、ジョニー・グリーンウッドがイニシアティヴをとったピンク・フロイド 讃歌ともいうべき「ザ・ツーリスト」など、彼らの素養が垣間見えるのも興味深いが、何より本作を90年代ならではの名盤たらしめているのは、そうした豊かな素養がトリップホップをはじめとする同時代の手法からの影響と結びつ いて、新しい(単なるスタイルの模倣ではない)プログレッシヴ・サウンドを創出した点だといえる。

1位 ニルヴァーナ|ネヴァーマインド

1990年代初頭以降の音楽シーンの風景が、 この一枚で一変した。 本作からの先行シングル「スメルズ・ライク・ティーン ・スピリット」の異様な雰囲気漂うMVがMTVで流れる のを観た時、ニルヴァーナが異世界からの乱入者に見えた 人は少なくなかっただろう。ポップス、アイドル、ハード ・ロック/ヘヴィ・メタルでほぼ埋め尽くされていた当時 のメインストリーム。メジャーがインディに触手を伸ばし 始める以前なら、そこには存在しないはずの3人組である。 けれど、彼らこそが我々と同じ世界の住人であると皆が気 づくのに、そう時間はかからなかった。普段着のままアグ レッシヴにギターをかき鳴らし、怒りや困惑、絶望を吐き 出し絶叫に変えて歌うカート・コバーン (10g)の姿は、見るからにナイーヴで、痛々しいほどリアルだった。

叫んでもなおキャッチーなメロディが冴えるソングライ ティング、インパクトのあるリフ、重量感のあるパワフル リズム。カート自身が「ブラック・フラッグとブラック ・サバスに蹂躙されているザ・ナックとベイ・シティ・ロ ーラーズ」と表現した音楽は、攻撃性と人なつこさを兼ね 備えて求心力絶大。 さらに、自身の孤独や疎外感、社会に 対する苛立ちを綴ったパーソナルな歌は、望み通り無気力 若者を目覚めさせる起爆剤となったが、目覚めた彼らは カートをX世代の代弁者として奉り、より一層の助けを彼 に求めた(そうした不本意がカートの苦悩を深めていった ことは、ここに記すまでもないだろう)。

また、「ポーリー」などの歌詞でカートが見せたフェミ ニズムやLGBTQへの理解が、従来のハードでアグレッ シヴなロックが誇示しがちであったマチズモと対極にあっ たことも、今改めて評価していい。92年の来日公演時のイ ンタヴューでカートは、こんな話をしていた。「俺たちはアンダーグラウンド・ギター・ロックのバンドにしては、 女子受けがいい方だと思うけど、もっとたくさんの女子が来てくれれば嬉しいな。それで、俺たちが影響を与えることができて、彼女たちがギターを手に取って、少年ナイフ のようなバンドをやってくれればもっと嬉しいよ」。

カートの故郷には、彼の功績を讃えて“ワシントン州ア バディーンにようこそ。 あなたのままでお越しください (Come As You Are)” と書いた標識が立っているという。 かの地で安らかに眠るカートの魂を思う。

個人的に好きなアルバムのランキング

197位:リンダ・ロンシュタット&エミルー・ハリス

グリン・ジョンズがプロデュース。バーニーレドンがバックの中心。

Western Wall: The Tuscon Sessions

178位:トラヴィス

正直いうと、レッチリやオアシスよりトラヴィスの方が好きだった。

The Man Who

171位:ベン・フォールズ・ファイブ

ギターレストリオでポップな音。タワレコイチオシでロックに飽きた大人に人気だった。

Ben Folds Five

146位:ブエナ・ヴィスタ・ソーシャル・クラブ

当時は一大ブームだった。ライクーダーの功績。

Buena Vista Social Club

84位:トラッシュ・キャン・シナトラズ

アズテックカメラの再来。トラキャンのデビュー作。「A Happy Pocket」の方が好き。

Cake

77位:ア・トライブ・コールド・クエスト

ジャズとヒップホップの大融合。

The Low End Theory [Explicit]

74位:エリック・クラプトン

90年代を代表するアルバム。アンプラグドの流れを作った。みんなこのCD買った。

Unplugged (Deluxe Edition)

69位:シェリル・クロウ

これも90年代を代表するアルバムだと思う。

Tuesday Night Music Club

33位:マッシブ・アタック

リアルタイムでは聞いてない。名盤ということで後追いで聞いた。

Blue Lines (2012 Mix/Master) [Explicit]

21位:U2

これ以降U2聞かなくなった。アルバムは『焔』までの3枚しか買わんかったけど。

Achtung Baby

米国のアルバム売上で見る、90年代ベストアルバム

アルバム売上からの考察。

最新のアメリカレコード協会、オールタイム売上ランキングTOP30は以下です。単位は100万枚。右端の数字が売上枚数です。ここ数年はサブスク時代になって、アルバム売上というのは体を成さなくなりましたが。

ビートルズって青盤・赤盤より、ホワイトアルバムの方が売れてたんやね。知らんかった。

ARTIST ALBUM CERTIFIED UNITS ALL TIME

  1. EAGLES EAGLES/THEIR GREATEST HITS 1971 – 1975  38
  2. MICHAEL JACKSON THRILLER  34
  3. EAGLES HOTEL CALIFORNIA  26
  4. AC/DC BACK IN BLACK  25
  5. LED ZEPPELIN LED ZEPPELIN IV  24
  6. THE BEATLES THE BEATLES  24
  7. BILLY JOEL GREATEST HITS VOLUME I & VOLUME II  23
  8. PINK FLOYD THE WALL  23
  9. GARTH BROOKS DOUBLE LIVE  21
  10. HOOTIE & THE BLOWFISH CRACKED REAR VIEW  21
  11. FLEETWOOD MAC RUMOURS  20
  12. SHANIA TWAIN COME ON OVER  20
  13. GARTH BROOKS NO FENCES  18
  14. GUNS N’ ROSES APPETITE FOR DESTRUCTION  18
  15. WHITNEY HOUSTON THE BODYGUARD (SOUNDTRACK)  18
  16. BOSTON BOSTON  17
  17. ELTON JOHN GREATEST HITS  17
  18. THE BEATLES THE BEATLES 1967 – 1970  17
  19. ALANIS MORISSETTE JAGGED LITTLE PILL  16
  20. BEE GEES SATURDAY NIGHT FEVER (SOUNDTRACK)  16
  21. LED ZEPPELIN PHYSICAL GRAFFITI  16
  22. METALLICA METALLICA  16
  23. BOB MARLEY & THE WAILERS LEGEND  15
  24. BRUCE SPRINGSTEEN BORN IN THE U.S.A.  15
  25. JOURNEY GREATEST HITS  15
  26. PINK FLOYD DARK SIDE OF THE MOON  15
  27. SANTANA SUPERNATURAL  15
  28. STEVE MILLER BAND GREATEST HITS 1974-1978  15
  29. THE BEATLES THE BEATLES 1962 – 1966  15
  30. ADELE 21  14

世界売上は大票田の中国での売上をどう見るか難しい。ググっても検索エンジンがバイドゥだから情報がないし。世界売上となると現状は正確な物差しが残念ながら無い。安価な海賊盤をカウントするのかとか。現在、世界売上と称されてるのはレーベルなどの自称数字だ。

正確なのはアメリカレコード協会(RIAA)のランキングです。上記はオールタイムの総売上枚数。黄色オレンジが90年代に発売されたアルバムです。黄色は外します。ガースとシャナイアはカントリーロックです。いちおうロックかもしれんけど外す。サンタナはラテンロックなのでこれも外す。ホイットニーはサントラなので外す。

となるとフーティアラニスメタリカロックアルバムとしてランクインしてくる。なぜかフーティとアラニスは今回のランキングから漏れていました。

柴崎裕二の解説コメントによるとミュージックマガジン的には選から外すみたい。『アメリカ本国で大衆的な人気があったルーツ志向のバンド、カウンティング・クロウズとかフーティ&ザ・ブロウフィッシュとか、そういうのは絶対受け入れられない』とのこと。

なんかB’zとロッキンオンみたいな関係でしょうか。う~ん…

カウンティング・クロウズ。トムペティがありならこれもありだと思うのですが。

Counting Crows – Mr. Jones (Official Music Video)

フーティも貼っときます。90年代に初めてラッカーの声聞いたときはぶっ飛びました。リアムと並ぶ90年代を代表する声です。

Hootie & The Blowfish – Hold On (Official Music Video)

世界の音楽市場

世界の「音源市場」について。いわゆるライブ売上を除いた配信やCDでの売上です。

米国、日本、ドイツ、イギリス、フランスの5カ国で世界市場の75%を占めています。2017年調べ。今はサブスク&円安で、だいぶ変わってるとは思いますが。

世界の音源売上

90年代。米国で一番売れたロックアルバムです。

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