ワイン1年生どころか、これを読めば立派なワイン通になれます。良書だったので、思わず読後に買おうかなと思うぐらい。ここ5年で読んだワイン本では、一番のおすすめです。これ以上のワイン本はない。
278pとボリュームたっぷりですが、ワインの基本、旧世界、新世界の地区ごとの特徴の説明がされてます。ほぼ各ページにイラストがあって、そのイラストが今風のアニメキャラみたい。とてもカワイイイ。
ぶどう品種ごとに以下のキャラが当てられてます。
イラストを使った説明のほかに、架空のマンガストーリーも展開。
文章もやわらかめで読みやすい。
以下に読書メモを。
目次
ワインの基本、4つの王道を飲んでみる
ワインのど定番。
・フランスワインのボルドーの赤。タンニン(渋み)が強く味ががっしりしてる。
・フランスワインのブルゴーニュの赤。かなり軽めの味。
・辛口のブルゴーニュの白。ブルゴーニュ地方のシャブリ地区で作られものが有名。
・やや甘口のリースリングの白。フランスのアルザスかドイツの白ワインが有名。
6つの品種を飲んでみる
ブドウの品種は世界に数千種類ある。主な品種の味わい分布図は以下。
ただし主要品種のトップグループは以下の6種類。
・カベルネ・ソーヴィニヨン
世界中で愛されるワインぶどう界の主人公。ボルドーにおいては超高級な神ワインに化ける。
・ピノ・ロワール
ブルゴーニュにおける最重要品種。土地の選り好みが激しい孤高のクイーン。偉大なロマネコンティをも生み出す高貴で複雑な味わい。
・メルロー
カベルネ・ソーヴィニヨンと双璧をなすボルドーの重要キャラ。果実味があるのにタンニン少なめ。まろやかで丸みのあるふくよかさ。
・シャルドネ
世界中で愛されるスーパーアイドル。シャブリ、シャンパン、カリフォルニアの白と変幻自在。その土地その土地の風土に見事に染まる。
・リースリング
貴腐、アイスワインなど数々の「高級甘口」の金字塔を打ち立てた甘口白の筆頭品種。もともと酸っぱいからこそ、甘すぎないおいしい甘口になる。
・ソーヴィニヨン・ブラン
青草やハーブの香りで口の中を容赦なく「爽やか」に仕上げる。すっきり白の代表品種。
6つの品種を覚えれば、ワインの世界を冒険できる。世の中に出てるワインの多くに6つの品種のうちいずれかが使われている。
単一(ヴァラエタル)と、ブレンドがある。旧世界ワインは一般的にブレンドが主流で、新世界のワインは単一が主流。
例外もあるが、おおざっぱにヨーロッパはブレンド、それ以外の国は単一と覚える。チリが初心者向けと言われるのは、単一ワインが多いから。
新世界は品種、旧世界は産地を見る
チリ、カリフォルニア、オーストラリアなど、新世界のワインは品種がラベルに書かれてる。ややこしいのはヨーロッパ(旧世界)のワイン。代表的なのはフランスワインの「AOC」
あらぺしおん 「どじりーぬ」 こんとろーれ
AOCはどの土地の条件をクリアしてるか、という証明書。その土地がより狭い地域を示していれば、一般的に品質も値段も高くなる。
あらぺしおん ボルドー こんとろーれ と真ん中に地区が入る。ボルドー地方の中にあるメドック地区のマルゴー村とか。
日本なら、銀座>中央区>東京都>関東地方と、「あらぺしおん 銀座 こんとろーれ」が高級になる。ちなみにAOCはEUの新規定でAOP(あらぺしおん どじりーぬ ぷろてじぇ)に徐々に移行し、AOCとAOPが混在してるが、基本的な考え方は変わらない。
ボルドーのおいしさは価格に比例し、メドック地区のの6つの村名クラスになると、店頭価格で5000円以上になる。さらに五大シャトー(醸造所のこと。本来の意味は城)は、金持ちじゃないと手が出せない。
フルボディ、ミディアムボディ、ライトボディの違い
これは「果実味」+「渋み」+「アルコール度数」を合計した強さ。
これらのうち2つか3つが強ければフルボディ、3つとも弱ければライトボディ。ミディアムは1つだけ強くて、他2つは弱いというイメージ。
簡単にいうと、「カルピスの原液、濃いめか薄めか」みたいな感じ。ナイス・バディとはいわない。
ワインの適温
重い赤:15~17度、軽い赤:12~14度、厚みのある白:8~10度、すっきり&甘口白:5~7度。ワインは赤でも白でも冷蔵庫の野菜室に入れとく。1万円以上の高級品を持ってるならワインセラー。赤なら飲み始める10分前に冷蔵庫から出すと適温。
ドメーヌとは
ボルドーの醸造所は「シャトー」と呼ばれていたが、ブルゴーニュは自分の畑で獲れたぶどうを醸造する「ドメーヌ」という小さな生産者と、複数の農家からぶどうを買いつけて醸造する「ネゴシアン」という大きな生産者に分かれている。一般的にドメーヌ発のワインは畑の個性が出やすく、ネゴシアン発のワインは欠点が少ない。
人気が高いのはドメーヌだが、値段もそれなりに高い。
ブルゴーニュの1000~2000円のワインはたいていおいしくない。ひどい目にあう。5000円以上のものからうまい。ボルドーも長期熟成の複雑な味は5000円以上から。
シャブリでがっかりしないために
ラベルを見る。いちばん上等なものには「グラン・クリュ」と書かれてる。次が「プルミエ・クリュ」。それから普通の「シャブリ」、一番下のランクは「プティ・シャブリ」。プルミエ・クリュより上であればシャブリはおすすめ。普通のシャブリ以下なら、他の辛口ワインを選んだ方が無難。
世界の人はなぜワインに熱狂するのか?テロワールを知ってしまったから
テロワールとは、ワインだけじゃなく、ぶどうを生みだす土壌とか気候みたいなものも、ボトルの中に封じ込められているという意味。
舌から伝わってくる味の先には、ぶどうを生みだした土壌である砂利、粘土、火山灰はもちろん、周辺に住んでる動物とか、土に棲息する虫とか細菌、その土地の人の性格など、あらゆるものが絡んで、複雑な味を形成する。
たとえばそのぶどう畑の周辺にキツネが棲んでいたり、鳥小屋があったりすると、意図せずとも土にキツネやニワトリのふん尿がまじる。またぶどう畑にハーブが生えてるとか、オリーブの木が植わってるようなこともある。「そんなの気のせい?」かもしれないが、そういう光景を思い浮かべながら飲むと、楽しくなる。
そのほかのメモ
・ソムリエがボトルを持ってきてラベルをみんなに見せるのは、「お前らが頼んだやつに間違いないか?」ということ。
・ホストのテイスティングは、客に「味がおかしい」「チェンジして」などの、文句をいわせないための決まりきった儀式。味覚のアピールタイムじゃない。
・コルクにカビが生えて臭い状態を「ブショネ」という。100本に1本の確率で存在する。とはいえ初心者にはなかなか区別できない。もし味がおかしいと思えばソムリエに、「このワインって、こういうものですか?」と恐る恐るきいてみてもいいかもしれない。ソムリエは飲んで確認し、客に説明する。
・イタリアはワイン法を制定するのが遅かったので、ぶどうの品種が2000種類ある。ワイン用のぶどうとして認められてるものだけで500種類。イタリアワインの専門家でないと、味を網羅するのは難しい。味はフランスに劣らないが、「当たり外れがちょっと激しめ」。
・フランスのボルドー、ブルゴーニュにあたるのは、イタリアではトスカーナ州と、ピエモンテ州。トスカーナ州はキャンティが有名。品種はサンジョベーゼ。チェリーっぽく、渋みはカベルネ・ソーヴィニヨンよりやさしく、酸味はピノロワールよりやさしい、バランスの取れた味。
・キャンティとはトスカーナ州のキャンティ地方で造られたワインのこと。ただイタリアはいい加減なので、ほかの地方も売れるので、とりあえずラベルにキャンティと書いてる。これはあかん、ということで、昔からキャンティを作ってる地方だけ、「キャンティ・クラシコ」を名乗ってよいというルールを定めた。お土産屋の「元祖キャンティ」みたいなこと。
・スペインワインと言えば、濃厚な赤、情熱の赤。スペインの品種は「赤のテンプラニーリョ」。香りが高く、濃密な味。熟したフルーツ系で、けっこうパワフル。6つの品種でいえばメルローが好みの人はわりと好きな味。
・スペインならではのワインは、スパークリングワインの「カヴァ」。カヴァはお手頃価格なのに、基本的な造り方がシャンパーニュ地方と同じで、全体的にすごく質が高い。
・アメリカのワインの9割はカリフォルニア州でつくられる。ナパヴァレーとソノマヴァレーが有名。ナパはカベルネ・ソーヴィニヨン主体のボルドー風、ソノマはピノ・ロワールやシャルドネ主体のブルゴーニュ風。ボルドー地方メドック地区の「シャトー・ムートン」を持ってるロス・チャイルドさんと一緒に造った、「オーパス・ワン」は、とにかく味がどっしりして、アルコール度数も高くて、果実味たっぷり。1本3万円ほどする高級ワイン。
・チリワインは、他の国と比べてなめらかで飲みやすい。酸味が少なく果実味たっぷり。どれも安く、はずしにくい。著者はチリワインを絶賛しない。チリワインだけで終わっちゃうとつまらないから。一度チリを飲んで気に入って、そのままずーっとチリで固定する人がいる。「またチリ?」「だって間違いないんだもん」。餃子は王将、カレーはココイチ。それでは本当のワイン好きになれない。ワインは冒険だ。当たった経験も外れた経験もすべて財産にして、一生をかけて「自分のワイン」探す旅をしてほしい。
若い二人が出会い♪
ワインより甘いキスをした♪
二人は一生懸命働いた♪
やがて4人の子どもができ 孫は8人いる♪
いろんな苦労があったが すべて懐かしい思い出だ♪
そろそろ お迎えがくるかもしれない♪
ぼくは生まれかわっても 君と人生を歩みたい♪
ジャクソン・ブラウン&ボニー・レイットで、Kisses Sweeter Than Wine♪